会議が終わるたびに30分から1時間、議事録の清書に追われている。話の流れは覚えているのに、決定事項とToDoを抜き出して関係者に共有するだけで、半日が溶けてしまう——中小企業の現場ではよくある光景です。

音声認識AIと要約AIの精度がここ2年で大きく上がり、議事録は「人が一字一句書き起こす作業」ではなくなりました。録音を流すだけで文字起こしと要約が出てくる時代に、どのツールを選び、どう運用に乗せるかで、月に10〜20時間の差が出ます。

この記事では、業務で実用に耐える代表的な2サービスである Otter.aiNotion AI を取り上げ、仕組み・料金・日本語精度・運用ルールまでを整理します。


議事録AIに任せられる範囲を整理する

「文字起こし」と「議事録化」は別工程

議事録AIを検討するときに最初に切り分けたいのが、音声から文字に起こす文字起こし工程と、文字起こしから要約・決定事項・ToDoを抽出する議事録化工程の違いです。両方を1つのツールでこなすサービスもあれば、片方に特化したサービスもあります。

  • 文字起こし特化型: 会議音声をリアルタイムで文字化する。話者識別あり。Otter.ai が代表例
  • 要約・整理特化型: すでにある文字起こしや議事メモを整形・要約する。Notion AI が代表例
  • 統合型: 録音→文字起こし→要約まで一括で行う。tl;dv や Zoom AI Companion など

自社の会議パターンを棚卸しする

議事録AIは「全社で1つに統一」より「会議の種類ごとに使い分け」のほうがフィットします。導入前に、社内会議・顧客打ち合わせ・1on1・採用面接などを一覧化し、それぞれの所要時間・参加人数・記録の重要度・機密度を整理しておくと、ツール選定が一気に進みます。


Otter.aiとNotion AIの違いを正面から比較する

機能・料金の比較表

項目

Otter.ai

Notion AI

得意領域

会議のリアルタイム文字起こし・話者識別

既存テキストの要約・議事録の整形

日本語対応

2024年から日本語の文字起こしに対応(精度は英語より一段下)

日本語要約・整形は実用レベル

料金(2026年5月時点)

無料プラン月300分 / Proプラン月20ドル / Businessプラン月30ドル

Notion有料プラン+AIアドオン月10ドル(年払い時)

会議連携

Zoom / Google Meet / Microsoft Teams にBotとして自動参加

会議参加機能なし。録音ファイルや文字起こしを後から貼り付け

議事録の保存場所

Otter上のクラウド

Notion内のページ(社内wikiと統合できる)

セキュリティ

米国サーバ。Businessプランで暗号化・SAML SSO

米国サーバ。Enterpriseプランで監査ログ・SAML SSO

使い分けの目安

機能を見比べた結果、現実的には次のような分担になります。

  • 定例会議・顧客打ち合わせなど「会議中の発言を漏らしたくない場面」: Otter.ai
  • 1on1メモ・ブレストメモ・打ち合わせ後の整理: Notion AI
  • すでにNotionを社内wikiに使っているなら、最終アウトプットはNotion側に集約するのが自然

すでに Notionで社内wikiを構築している会社 であれば、Otter で文字起こしして Notion AI で整える二段構成が、運用負荷とアウトプット品質のバランスが取れます。


議事録自動化を運用に乗せる5つの手順

1. 録音可否の社内ルールを先に決める

技術より先に決めるべきは、誰に録音を伝え、どこまでを記録するかのルールです。顧客との打ち合わせを録音する場合は、冒頭で「議事録作成のためAIで文字起こしします」と一言断るのが基本姿勢になります。社内会議でも、評価面談や懲戒に関わる会議は録音対象外とするなど、線引きを明文化しておくと後で揉めません。

2. 議事録テンプレートを固定する

AIに「議事録を作って」と漠然と指示すると毎回フォーマットがブレます。次のような固定テンプレートを用意し、要約プロンプトに必ず含めると品質が安定します。

  1. 会議名 / 日時 / 参加者
  2. 議題(箇条書き)
  3. 決定事項
  4. ToDo(担当者・期限つき)
  5. 次回までの宿題

3. 要約プロンプトを社内で共有する

Notion AI に渡す要約プロンプトは個人差が出やすいので、社内で1つに統一しておきます。「以下の議事メモから、決定事項とToDoを担当者・期限つきで抽出してください。曖昧な発言は未確定と注記してください」のように、抽出基準を明示するのがコツです。プロンプトの作り方そのものに不安があるなら、 AIプロンプトの基本的な書き方 を先に押さえておくと応用が利きます。

4. 機密度の高い会議は手動運用に残す

給与・人事評価・M&Aなど機密度の高い会議は、クラウド型の議事録AIに乗せない判断も必要です。社内ポリシーで「録音禁止リスト」を決め、対象会議は従来通り人が手書きする運用にしておくと、情報漏洩リスクを抑えられます。

5. 議事録の最終承認は人が行う

AIの要約は8割の精度で出てきますが、固有名詞・金額・期日の誤りは致命的になります。会議の主催者または書記担当が、共有前に必ず決定事項とToDoだけは目視確認する運用にしましょう。すべてを精読する必要はなく、重要パートだけのレビューで十分に品質が保てます。


導入でつまずきやすいポイント

日本語の固有名詞は誤変換が前提

社名・人名・業界用語は、特に Otter.ai でほぼ確実に誤変換されます。「カスタム辞書」機能があるサービスを選ぶか、議事録テンプレートの冒頭に「よくある誤変換と正しい表記」リストを置き、Notion AI 側で一括置換させるのが現実的な打ち手です。

無料プランの制限を見誤らない

Otter.ai の無料プラン月300分は、週1回1時間の会議でも4本ほどで上限に到達します。本格運用するなら最低でも Pro プラン(月20ドル)、複数人で共有するなら Business プラン(月30ドル × 人数)が必要です。月のコストは「議事録作成に費やしていた時間 × 時給」と比較すれば、数倍のリターンが見える計算になります。

議事録の保管場所がバラバラになる

Otter にも Notion にも Slack にも議事録が散らばると、結局「あの会議の決定事項どこ?」が再発します。最終アウトプットは1か所に集約する——例えば Notion の「会議録データベース」に必ず入れる——とルール化しておくと、ナレッジが資産として蓄積していきます。


まとめ:議事録AIはツール選定より運用設計が9割

議事録AIの効果は、ツール選びそのものより、社内ルール・テンプレート・最終承認フローの設計で決まります。Otter.ai で文字起こし、Notion AI で整形・要約、最終承認は人——という3段構成にすれば、週5時間以上かかっていた議事録作業を1時間以下に圧縮することが現実的です。まずは1つの定例会議から試して、テンプレートとプロンプトを磨いていくのが定着への近道です。


よくある質問

Q. Otter.aiは日本語の精度が低いと聞きますが、業務で使えますか?

A. 英語ほどではありませんが、2024年以降の日本語対応で実用域に達しています。社名・人名の誤変換は前提とし、Notion AI 側で固有名詞を一括置換するか、カスタム辞書のあるサービスと併用すれば、業務利用に耐えます。

Q. Zoom AI Companionで十分ではないですか?

A. Zoom 単体で会議が完結する企業なら Zoom AI Companion で足ります。ただし Google Meet や Microsoft Teams も使っている、議事録を Notion の社内wikiに集約したい、といった要件があるなら、Otter.ai + Notion AI のほうが横断的に運用できます。

Q. 顧客との打ち合わせを録音するのは法律的に問題ありませんか?

A. 日本では当事者の一方が録音に同意していれば違法にはなりませんが、信頼関係の観点から冒頭で「議事録作成のため録音させていただきます」と必ず伝えるのが標準的な運用です。録音データの保管期間・削除ルールも社内で決めておきましょう。

Q. 議事録AIを導入したら、書記担当はいらなくなりますか?

A. 書記の役割は「書き起こす人」から「決定事項を確定させる人」に変わります。AIが出した要約をレビューし、曖昧な発言を確認し、ToDoの担当者・期限を明確化する作業は、引き続き人の判断が必要です。


議事録AIの導入は、ツール契約より前に「どの会議を対象にし、どんなテンプレートで、誰が最終承認するか」を決めることが成否を分けます。自社の会議パターンに合わせた運用設計を一緒に考えたい方は、30分の無料相談でご状況を聞かせてください。具体的なツール選定と運用フローの叩き台までご提案します。