月末になると経理担当が領収書の束と向き合い、手入力とExcel突き合わせに半日かかる——中小企業ではよく見る光景です。経費精算は売上を生まない業務ですが、止めるわけにもいかず、人手と時間を確実に奪っていきます。

2023年10月のインボイス制度開始、2024年1月の電子帳簿保存法(電帳法)の本格運用で、紙の領収書を扱う前提のやり方はかえって手間が増えました。受領した電子データはそのまま電子で保存する義務があり、紙運用と電子運用が混在すると経理の負担はむしろ膨らみます。

この記事では、楽楽精算とマネーフォワード クラウド経費という代表的な2ツールを軸に、経費精算を自動化する具体的な手順を解説します。どちらを選ぶか、導入で何をつまずきやすいか、現場に定着させるコツまで、20〜100名規模の会社を想定して整理します。


経費精算の何が非効率なのか——自動化で消える4つの作業

「自動化」と聞くと全自動を想像しますが、経費精算で削れるのは主に入力・確認・転記の手間です。まずどの作業がなくなるのかを具体的に把握しておくと、ツール選びの判断がぶれません。

手作業で発生している典型的なムダ

  • 領収書の手入力:日付・金額・店名・科目を1件ずつExcelに打ち込む。月100件あれば数時間単位の作業
  • 申請の差し戻し:科目間違いや添付漏れを経理が見つけ、メールやチャットで本人に戻す往復
  • 承認待ちの放置:紙の申請書が上長の机で止まり、月末に駆け込みで承認が集中する
  • 会計ソフトへの再入力:精算が確定したデータを、今度は会計ソフトに二重で打ち直す

クラウド経費精算ツールは、この4つをそれぞれ「スマホ撮影+OCR読み取り」「規程チェックの自動化」「ワークフロー承認」「会計ソフト連携」で置き換えます。導入効果が一番大きいのは、件数が多く属人化しやすい1つ目と4つ目です。

OCRと自動仕訳がコアになる

最近のツールは、スマホで領収書を撮影するとAI-OCRが日付・金額・支払先を自動で読み取り、過去の入力履歴から勘定科目まで推測します。交通系ICカードやクレジットカードの利用明細を取り込めば、そもそも領収書の入力自体が不要になる経費も増えます。手入力をゼロに近づけることが、経費精算自動化の本質です。


楽楽精算とマネーフォワード クラウド経費を比較する

国内の中小企業でよく候補に挙がるのが、ラクスの「楽楽精算」とマネーフォワードの「マネーフォワード クラウド経費」です。どちらも経費精算に必要な機能は一通り揃っていますが、設計思想と得意分野が異なります。

機能・料金の比較表

項目

楽楽精算

マネーフォワード クラウド経費

初期費用

110,000円(税込)

0円

月額費用の目安

33,000円(税込)〜/ユーザー課金

基本料+従量(1名あたり数百円規模)

得意分野

複雑な経費規程・大量申請の運用に強い

会計・給与など同社サービスとの連携

OCR・自動読取

あり(オペレーター入力代行オプションも)

あり(AI-OCR標準)

会計ソフト連携

主要会計ソフトとCSV/API連携

マネーフォワード クラウド会計と密連携

電帳法・インボイス対応

対応(JIIMA認証)

対応(JIIMA認証)

向く規模

50名以上・規程が複雑な企業

数名〜数十名・他のバックオフィスもクラウド化したい企業

料金は契約条件で変動するため、必ず最新の見積もりを取ってください。ここでは「どちらの設計が自社に合うか」を判断する目安として捉えてください。

どちらを選ぶべきか

判断軸はシンプルです。すでに会計ソフトに何を使っているかで大きく決まります。

  • マネーフォワード クラウド会計を使っている/導入予定:マネーフォワード クラウド経費が自然。仕訳連携の手間がほぼ消える
  • 弥生・勘定奉行など他社会計を使い続ける/申請ルールが複雑:楽楽精算が無難。承認フローや規程の作り込みに強い
  • とにかく初期費用をかけず小さく始めたい:初期費用0円のマネーフォワードが入りやすい

会計ソフトをこれから見直すなら、経費精算と会計をセットで考えると失敗が減ります。固定費の棚卸しという観点では野良SaaSを棚卸しして固定費を削減する方法も合わせて読むと、ツールを増やしすぎない判断がしやすくなります。


導入の手順——4ステップで運用に乗せる

ツールを契約しただけでは経費精算は楽になりません。規程の整理と初期設定を飛ばすと「ツールを入れたのに二重管理が増えた」という典型的な失敗に陥ります。次の順番で進めます。

ステップ1:現状の経費規程と科目を棚卸しする

まず、現行の経費精算で使っている勘定科目・申請ルール・承認者を書き出します。ここが曖昧なままツールに設定すると、申請者ごとに解釈が割れて差し戻しが増えます。交通費・交際費・消耗品費など、よく使う科目を10〜20個に絞り込んでおくと現場が迷いません。

ステップ2:承認ワークフローを設計する

  1. 申請者 → 直属の上長 → 経理、の基本フローを決める
  2. 金額のしきい値(例:5万円以上は部門長承認を追加)を設定する
  3. 承認者不在時の代理承認ルートを必ず用意する

承認が1人に集中すると月末に詰まります。代理承認を最初から組み込んでおくのが定着のコツです。

ステップ3:会計ソフト連携と科目マッピングを設定する

精算データを会計ソフトへ自動で流すために、経費精算ツール側の科目と会計ソフト側の勘定科目を1対1で対応づけます。ここを正しく設定すると、精算確定後の会計入力がボタン1つ、あるいは自動連携で完結します。電帳法対応として、領収書画像の保存形式と検索要件(日付・金額・取引先で検索できる状態)も合わせて確認します。

ステップ4:一部門で試験運用してから全社展開する

いきなり全社に配ると、操作の問い合わせが経理に殺到します。まず1部門・1ヶ月だけ試験運用し、つまずいた点をマニュアル化してから広げます。スマホアプリの撮影方法とクレジットカード連携の設定は、最初に教えると問い合わせが大きく減ります。


定着させるための運用ルール

ツールは入れて終わりではなく、現場が日常的に使い続けてはじめて効果が出ます。導入後の数ヶ月でルールを固めます。

領収書はその場で撮る習慣にする

経費精算が溜まる最大の原因は「月末にまとめて入力」です。スマホアプリで支払った直後に撮影・申請する運用にすると、月末の駆け込みが消えます。出張や外出が多い社員には、移動中の数分で申請を済ませる流れを最初に体験してもらうと定着が早まります。

締め日と承認期限をカレンダーに固定する

「毎月20日締め・25日までに上長承認」のように、締め日と承認期限をチームの共有カレンダーに固定で入れておきます。期限が見えると承認の放置が減ります。スケジュールの共有運用はチームのスケジュール共有と予定調整の仕組み化の考え方がそのまま使えます。


まとめ:経費精算の自動化は「手入力ゼロ」と「会計連携」が肝

経費精算の自動化で効果が大きいのは、領収書の手入力をOCR・カード連携でなくすことと、精算データを会計ソフトへ自動で流すことの2点です。ツールは、すでに使っている会計ソフトに合わせて選ぶと連携の手間が消えます。マネーフォワード クラウド会計を使うならマネーフォワード クラウド経費、他社会計や複雑な規程なら楽楽精算が無難な出発点です。導入は規程の棚卸し→ワークフロー設計→会計連携→部門試験運用の順で、小さく始めて広げるのが失敗しないルートです。


よくある質問

Q. 楽楽精算とマネーフォワード、結局どちらが安いですか?

A. 初期費用はマネーフォワード クラウド経費が0円で始めやすく、楽楽精算は初期費用がかかります。月額は利用人数と契約条件で逆転することもあるため、自社の人数で両方の見積もりを取って比較するのが確実です。会計ソフトとの連携で生まれる工数削減まで含めて判断してください。

Q. 電子帳簿保存法に対応するには何をすればいいですか?

A. メールやWebで受け取った電子の領収書は、紙に印刷せず電子のまま保存する必要があります。クラウド経費精算ツールはJIIMA認証を取得した製品が多く、日付・金額・取引先での検索要件を満たした状態で自動保存してくれます。ツール選定時にJIIMA認証の有無を確認すれば、要件の大半はクリアできます。

Q. 紙の領収書はもう使えなくなりますか?

A. いいえ。紙で受け取った領収書は紙のまま保存しても問題ありません。電帳法で電子保存が義務なのは「電子で受け取ったデータ」だけです。ただし運用がシンプルになるため、紙の領収書もスキャナ保存に統一する企業が増えています。

Q. 小規模(5名以下)でも導入する意味はありますか?

A. あります。件数が少なくても、インボイス・電帳法対応を手作業でやると確認漏れのリスクが残ります。初期費用0円で始められるツールなら、月数千円のコストで法対応と入力の手間を同時に解決できるため、少人数こそ費用対効果が出やすい領域です。


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